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第59回日本公衆衛生学会参加報告 

       H12.10.18−20 於前橋市

 利根川が勢いよく流れ、赤城の山や榛名山が間近に見渡せる。会場のグリーンドームはただただ広く、何と競輪場だった。
1 シンポジウム「国民運動としての健康日本21」
 20世紀、日本は長寿世界一となった。これは誇るべきことである。日本的食文化が特に注目されているのは当然であるが、日本社会の法律や規範・制度に依拠して達成された記録であるといえるかもしれない。「温故創新」を掲げよう。先輩の努力を受けて健康への挑戦。総論賛成、各論は公衆衛生に携わる個々人が作っていくとの認識を持とうと主張された。
 また健康日本21は21世紀に向けて更に長寿をめざし、QOLの向上も目指すが、プランニングは住民と一緒に考える・調査する・一緒に取り組んで行くというやり方しかない。また数々の目標値を示しているが、これは現在の健康科学としての到達点である。一日の歩数7200歩を8200歩に、という目標もあるが、豊田市は当然車社会であるが、車を放棄せよという目標ではない。地方現場に即した方策の適用が望まれる、等の議論があった。
 終了間際には、座長の誘導もあって、保健所頑張れ、汗を流せ、ただし一人でやらず、職種を越えてみんなでやれ、と会場から檄が飛び拍手が巻き上がり、21世紀の始まりが間近に感じられるシンポジウムとなった。
2 食品衛生講習の方法及び評価について
 岡山県の食品衛生監視員が発表していた。講習会の準備方法として、学校教育で使用される「学習指導案」を作成した。講習後受講者による講習内容の評価をアンケート方式で回答を得ていた。評価されることには抵抗があったようだが、展開のある講習、時間の適正配分など、次の講習会に反映させることが出来たとの事であった。
 ポスターセッションの後、岡山カキの状況を尋ねてみると、昨シーズンは、生食用カキによる食中毒が連発し、後半は加熱調理用しか出荷できなかった。加工所は昨シーズンに初めて、組合による大型処理施設が稼動し、カキむきみ加工が衛生面でかなり改善されたと考えていたのに驚いた、との事であった。本年も11月から本格的な出荷が始まる。
 注:12年秋以降岡山カキは正常に出荷されている。
3 集団給食施設ネットワークの構築について
 これは兵庫県庁の栄養士が発表していた。ネットワーク作りのきっかけは、阪神大震災後県議会における質問で「給食がストップした時の対策はいかに?」に対する答えとして組織化を実施したとの事であった。兵庫県下の各保健所単位で組織化し一保健所で数十施設、県下で1,153施設の参加する兵庫県集団給食施設協議会が立ち上げられた。
 地震・風水害・食中毒などで病院・福祉施設・学校・事業所などの給食がストップした時、給食場が互いに助け合う。会員に対して何食までなら応援出来るか、という数を予め登録をしてもらっておき、いざという時に近くの会員に登録数の応援を求める。大震災の時は、緊急措置として、近くのコミュニティーセンターなど公共施設の調理場を十分殺菌の上、利用するという方法もあったとのことである。
 食品衛生監視員の側から言えば、集団給食施設で食中毒があれば、営業禁止命令、疑いが強ければ当面給食自粛の強い指導でこと足りるが、多くの患者や入所者を抱えた病院や社会福祉施設運営の立場からは、外食や弁当への切換えも出来ず困り切ってしまうので、このような互助組織が必要となるのだ。ただ、この協議会を立ち上げた後食中毒の発生があったが、やはり予防課サイドと衛生課サイドで少々摩擦があったようだ。
 大震災を経験した兵庫県には危機管理対策の奔流が、まだまだ継続しているようだ。

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