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第22回日本食品微生物学会(大阪)報告

平成13年10月18日から19日まで新大阪メルパルクで開かれた。新大阪はビジネスの街だ。子供の姿をついぞ見かけなかった。
1 牛タタキからのO−157の報告があった。1都6県にまたがるO−157患者の発生をみたものだ。O−157は潜伏期間が長く原因食品にたどり着くのはなかなか難しいのであるが、追跡調査により判明したものだ。
 特にO−157菌株の類似性を見るためにPFGE(パルスフィールドゲル電気泳動法)が用いられていた。この方法は菌から遺伝子DNAを抽出し、それを酵素で切断し電気泳動法で分離し切断パターンを比べるものである。見事にパターンが一致しており同一性があると判断されていた。県を越えての協力により原因究明がされていた。
 切断パターンはE−メールで情報交換し同一性の比較により全く無関係と思われるO157事件もDiffuse outbreak(小流行)として原因の糸口をつかめると発表されていた。
 ファミリーレストランチェーンであった「ビーフ角切りステーキ」でも同様の発表があった。
2 微生物リスクアセスメントのシンポジウムがあった。ファームツーテーブル(農場から食卓までの微生物管理)として全体をとらえ各段階毎の食品微生物の量と検出頻度の資料が求められている。そう言う面では大腸菌群陽性陰性という資料は役に立たないなあと報告者のWHO職員豊福氏は発言していた。氏はジュネーブからとんぼ返りの発表であった。リスクアセスメントを追及するためには定性ではなく定量のデータが重要であり、このへんの議論をもっと現場の検査担当が行い、業務のシフトも願えればとしていた。
 また、日本の検食制度は暴露濃度と発症の関係を解き明かすために非常に役立っているが、検食がどう作成されどのような温度経過で保管されていたか、の正確な情報が必要だと述べていた。たまにこれは変だというくらいの大量の菌が検出され冷蔵されていなかったのではと疑ってしまうものもあるがその辺の情報がなくリスクアセスメントのための基礎資料として使いずらいようだ。
 WHOの関連ホームページはhttp://www.who.int/fsf/からmicrobiorogical assecementのboxをクリックする。サルモネラやリステリア等々のスライドと説明など各種情報がつまっている(英文)。

3 広島市の散発性カンピロバクター食中毒についての発表もあった。過去3年間で平均280件の本食中毒の届出があった。(すごい数だ。単発事例も入っているんだろう。)発症前1週間の肉類の喫食は42%であった。これは本食中毒の潜伏期間が長く1週間もさかのぼると忘れた、との回答が多いためらしい。広島市では食品衛生課内に食品情報センターを組織し各種情報の発信をしているようだ。カンピロバクターをはじめいろいろなパンフレットも作成している。

4 教育講演、ぶどう球菌エンテロトキシン研究の変遷について。講師は五十嵐氏(雪印乳業はあの事件後食品衛生研究所に、元東京都立衛生研究所の五十嵐氏を迎え入れた。)氏はブドウ球菌の研究では第一人者だ。従来のブドウ球菌食中毒では生菌が食事とともに体内に摂取されている事例が多いが、今回の事件では完全に殺菌され毒素だけが体内に入っている。これが下痢の多かった今回の事件の原因かもしれない。今後の研究を待つとの発言があった。
 大阪にお邪魔したついでに大阪市の官公所にもお邪魔したが、奇しくも事件の担当責任者に出くわし、貴重な体験談を拝聴できた。
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