尺八ワンポイント 本文へジャンプ


(8)棒吹きから抜け出る

 三曲合奏(尺八・琴・三絃)する時、尺八も見事に吹きたいですよね。ところが、出てくる音は譜面の音をなぞったそのままの音、棒吹きと呼ばれるようですが、メロディーとして聞こえてきません。琴と三絃は大人の演奏、尺八は子供の演奏に聞こえてきます。やはり譜面通りではなく、あれこれ音に飾りをつけてやる必要があります。
(1)ユリ
 音の修飾で最たるものはユリでしょう。2拍以上の長音はユルことに心がけましょう。ユリはちょっとユレば大きく音が変わる場所を探しそこでユリます。ユル時には歌口と唇が正確に平行になっていないとぷつと音が切れてしまいます。まっすぐに吹くのはモノクロの世界、ユルのはカラー版。全く別の世界となります。また一からやり直しのような、世界が広がったような感じがあります。
(2)音を正確に出す
 三曲合奏は音の和音で構成されます。そこで尺八の音の高低がずれていると、ハーモニーが崩れます。琴方はかなりあきらめているようですが、甘えることなく常に音の高さは正しくしましょう。半音(ツ、チ、ハ、レ)は、大きくずれやすいし、ピ、ヒ、タ、リもかなりずれやすいものです。また、全音でもチやハも微妙にずれます。チューナーを常時ONにしておき確認しながら練習しましょう。
(3)一音一音を大事に
音の一つ一つに十分息を注ぎましょう。尺八は普通に音を出すと、出だしの音は小さいものです。音が出たからといって安心せずに、更に息を注ぎ込み音を一人前にしましょう。1拍は1拍、2拍は2拍の長さにちゃんと伸ばしましょう。尺八の音は最後までちゃんと息を注ぎ込んでいないとすぐに音が弱ってしまいます。このように、一つ一つの音を一人前に育てるとだんだんいい音メロディーに聞こえてきます。スタッカート記号の演奏でも、リコーダーのように吹くと、プツッと音が切れてしまって、美しく聞こえません。もう少し息を長めに注いで一人前の音でスタッカートを切りましょう。
(4) レチ チ−など拍子外の音
  (8分音符の拍子外のレ)がある場合は、単にレの音を出すのではなく、息の量を多めに注ぎこみます。その勢いで次のチ−にアクセントをつけます。
(5)指打ちを行う
 2孔や3孔や4孔や5孔を打ちます。レチーの時、チーの直前に4孔を打ちます。ロツーのツの直前に2孔又は3孔又は4孔を打ちます。ツレーのレの直前に3孔又は4孔を打ちます。慣れるまでは全部4孔打ちでも結構です。
 チハーのハの前に5孔を打ちます。
 通常は1回打つのですが、重ね打ちをする超ベテランさんもいます。直前に2回打つわけです。
(6)音をふくらませる
 尺八は一気に息を吹き込むとボン!とかバン!とか破裂するような音が出てしまいます。音の出だしはその2〜3歩前の音で始め、すみやかに音をふくらませて必要な強さにしましょう。音を大きくするには唇をこすりましょう。(下唇をずるっと上唇の下にひっこめて息の量を多くする必要があります。)
(7)全開音を息継ぎの直前に鳴らす
 尺八の面白いところは、息継ぎの直前に指を全部離すと全開音が鳴ることです。ポッという微妙な音が鳴ります。尺八吹きベテランのうちかなりの方は、この全開音を見事に挿入されます。息継ぎの時には必ず挿入される方も見えます。
 「春の海」の最初の方に、乙ローーーー、ハロツレチーーレチー、が出てきますが、乙ローーーー、の息継ぎの時、ポワンといい音が鳴るはずです。全開音が挿入されています。
(8)息継ぎを素早くする
 第4章(10)息継ぎの仕方で述べたように、尺八は息継ぎの場面で音の流れが途切れやすいのですが、息継ぎを素早くすることでスムーズにつながります。
 (6)のように音をふくらませながら、全開音をかすかに鳴らし、息継ぎを素早くすると、あーら不思議、スムーズにつながります。
(9)笛を振り下ろしてスタートする
 尺八は音のスタートが遅れやすい楽器です。スタート時に息を注ぎ込んでいるのに音が鳴らず、一瞬遅れて音が鳴りだすことがよくあります。ひどいと空振りして1音鳴らずに次の音から鳴ることもあります。バーンと出る場合には、笛を上に振りかざして、そこから振り下ろしながらバーンと出てみましょう。合奏の時、リーダー格の方がよく笛を振り下ろしているように見えます。音を合わせるためにやっているように見えますが、意外とバーンと出るためにやっているのではないかと思っています。なお、バーンと出ると音楽性が落ちるということもありますので、録音して聞いてみるなど調和のとれた音を目指しましょう。