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温故知新 
 −トリプトファン事件(1989年)−(その後)
                                   平成19年4月1日
                                   kkankos
 

トリプトファン事件(その後) update 2007.4.1

どうも原因が違うらしい。健康食品トリプトファンを食べて好酸球増加筋肉痛症候群(以下EMSという)となり38名の死者を出した事件の原因は、不純物のためで、その不純物は遺伝子組み換えの細菌株で製造したトリプトファンの不十分な精製による不純物のためだと見られてきたが、どうも不純物が原因ではないらしい。

平成191月発行の健康食品・中毒百科(丸善)内藤裕史著によれば、トリプトファンの不純物によるものではなく、トリプトファンそのものの過量摂取によるものの可能性が高いということのようだ。(内藤氏は筑波中毒情報センターを組織した方である。)

(1)米国食品医薬品局(FDA)のその後の見解
 FDA1989年トリプトファンを主成分とする全製品の回収を緊急的に指示した。
 その後1993年、FDAは次のように発表した。「当初、昭和電工の特定の製品に含まれる不純物が原因と考えられていた。しかしその後の調査で、好酸球増加・筋肉症候群、あるいは好酸球性筋肉炎のような類似疾患が、他社の製品で1989年以前にも起きていることが分かった。遺伝子組み換え技術とは関係ないL-5-ヒドロキシトリプトファンや類似物質によってもおきている。一部の患者では、ある種の体質や素因に関係があることも分かった。この病気の原因は必ずしも単一の製品や不純物に帰せられるものではなく、いくつもの複合要因が関係している。」

(2)カナダのSpitzerの論文
 不純物が原因ではないという根拠はカナダのSpitzer 1995年の論文が示しているとしている。カナダではトリプトファンは健康食品としては販売されていない、服用のためには医師の処方箋が必要なのであるが、Spitzerらの2州の医師5,476人への調査によれば、カナダにはトリプトファンを摂取せずにEMSと診断された患者が19人、不確定診断された人が25人いた。これとは別に、カナダには10人がトリプトファンを摂取して発病した人がいる。そのうち9人は米国のトリプトファンを健康食品として摂取していた。
 以上のカナダの状況より、EMSには原発性のものと二次性のものがあって、原発性のものは原因不明だが二次性のものはトリプトファンの大量摂取に体質、素因、併用薬物の影響が重なって発病するものだとしている。

(3)トリプトファンが慢性筋膜炎治療に利用されていた
  Stockstill 1989によれば1980年代、慢性筋膜炎の痛みに対して、トリプトファンは医学的に認められた治療法であったという。となると、トリプトファン摂取が先だったのか、筋肉痛が先でその痛みに対してトリプトファンを摂取したのか、どちらが先なのか明確になっていないところがあるようだ。
 ところが、米国疾病予防管理センター(CDC)の疫学調査論文(1989)においてこのあたりの取り扱いが不十分な調査のまま、トリプトファンとEMSに因果関係があると結論付けており方法論がおかしいと疑問が出されている(Daniels 1995)

(4)著者(内藤氏)の結論
 ア 人体が自分で合成できないアミノ酸は必須アミノ酸として食事から取るしかないのであるが、トリプトファンは必須アミノ酸であるが1日1g程度を飲み続けただけで死亡することがある。

 イ 危機管理は不確実な情報から緊急避難的に指示を出すことがあるが、それは企業に大きな影響を及ぼす。不確実な情報を必要に応じ見直し、前の決定を随時修正または撤回しなければならない。

 (5)カンコス(管理者)の見解など
  トリプトファン事件と遺伝子組換え食品の関係は太い関係だと考えられてきましたがどうもそうではないようです。
 トリプトファン関連の標題については遺伝子組換え食品を取ることとしました。


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