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正確な検査について(ハムO157検査の感想)

 今日家に届いた「公衆衛生情報(2000年9月号)」で、本テーマが大特集されている。アンケート調査やインタビュー、覆面討論会など。ハムから存在しないO−157を検出してしまった、例の事件の反省である。以下のような内容だ。
(1)GLP(検査室適正作業基準)もHACCP(危害分析と重要管理点管理)も技術自体の崩壊を感じる。GLPの権威がかえって油断につながる。人のやることにはマニュアルを作ろうが何しようが、必ず抜け落ちるところがある。チェックと、危害分析が必要。
(2)クライシスマネジメントの前にリスクマネジメントがある。発生時対策がクライシスマネジメント、予防がリスクマネジメント。リスクマネジメントをおろそかにすると今回のような検査ミスが起きる。めったに起こらない検査ミスの防止のために精度管理と人材育成。予算を潤沢に。それがリスクマネジメントの土台。
(3)危機管理には情報公開、経験共有がなければいけない。失敗共有がもっとも重要!
(4)マスコミが張り付いた状態で、検査を通常3日のところ2日でやらねばならないことが起きることがある。微妙な判断を要するような途中結果が出た場合は、確認のために更に日にちが要するのに綱渡りだ。マスコミは白か黒かの検査しか考えていない。
(5)これは検査ミスもあるが、意思決定上のミスだ。KG保健所で誰が処分決定をしたの?現在なぞに包まれている。
技術屋だけで決定したのか、O157の蔓延を恐れるあまり、もしくは回収が遅延して後からマスコミからの指摘を恐れるあまり、検査ミスの可能性の声を無視して事務屋だけで決定したのか。ただただ、検査室の検査結果を盲信したのか。県衛研の意見を聞いたのか?科学的根拠が命の技術行政が、根拠をうっちゃっていたのか?(損害賠償裁判を控えているので公表できない?内緒でもいいから教えて欲しいなあ。)

 私(かつて10年間検査屋)の感想
 ハム回収の第1報のFAXを見て、「別会社の2工場のハム3検体から同時にO157検出」したの。こりゃあ検査ミスだがやと言っていたなあ。
(1)失敗談を徹底的に公開議論する必要があるなあ。本市でも検査ミスや判断ミスが数え切れないくらいあるはずだ。輸入缶詰の着色料の件など、どれくらい議論したか知れない。一つずつほじくり出して共通認識としなけりゃあだめだ。どこかにお邪魔したら、まずは失敗談を聞かねば。
 失敗談特集を冊子にして定期刊行するのも手だなあ。「全国食中毒事件録」はまさに失敗談特集だわなあ。その検査版が必要だなあ。恥ずかしくて出せない?いや、行政監察報告みたいなもんだけど。
 そう言えば信頼性確保部門の審査報告もあるんだよね。その辺でうまく流してもらえるといいなあ。
(2)保健所に検査室は不要論。記事に明確には載っていないが、民間委託した場合のもっとも困る点は、検査ミスの可能性に対する率直な議論が出来るかどうかにある。私は行政処分に先立ち、検査の信頼性についてたいてい探りを入れる。よくある違反か、めったにないのか、再試験はどうでしたとか、検査値のばらつきはどうとか、製造現場はメッチャメチャきれいだけどやっぱり検出するのとか。これだけ確認するだけで自信をもって処分に臨める。検査屋と行政マンとのお互いのためだ。この前、確認を省略して大失敗したなあ。お互いに不幸なことだ。
 同じ所内なら、同じ自治体なら普段からの意志疎通によりザックバランに指摘したり、おう!あの確認試験がまだやってないとか、検査のばらつきが激しくて、とかが気軽に言い合えるものだ。検査委託ならそう簡単に危なっかしい発言はしてくれないだろう、聞くだけ野暮だ。
 もしくは2ー3ランク上の確認検査を行い、ルーチン検査にまで突拍子もない高額の検査料を取られるかのどちらかだ。ちょっと言い過ぎたか?
(3)学会にはよく行ったなあ。全部自前だなあ。たいてい半分は居眠りしているけど、なんとなく聞いているんだよなあ。気になることは発表者に直接聞けるし、一緒に行った人と一杯やりながら議論も出来るし。いまだに食品衛生学会と食品微生物学会には籍を置いて、たまに聞きに行くもんなあ。
(4)訪問もよくしたなあ。都衛研、大阪府公衆衛研、東海区水産研究所、埼玉県衛研、国立衛試、大阪国立衛試、岐阜県衛研、東京市場衛検、浜松市場衛検たいてい無理矢理お邪魔していたなあ。でもいい話が聞けるんだわ。こちらも勉強してから出かけるし。
(5)おかしいぞって、ピーンと来ることが大事なんだよなあ。気がつきさえすれば、後は技術屋としてのパワーを全開だなあ。信ずる方向へまっしぐら。 

(追加)h13.3.23
(1)最近、病院の看護部門でヒヤリハット特集がはやっているが、検査部門でも重要だなあ、 ヒヤリがあれば事例一件、ハットがあってもまた一件と積み重ねていけばいい事例集が出来そうだなあ。

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