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△△△食監物語
香辛料の微生物汚染      h12.9.17

1 はじめに

 香辛料は、ピリリッ、ツーン、ハ−ッ、チリッ・・・と料理を見事に引き立たせてくれる。カレー、スープ、ハンバーグ等々香辛料無しには料理が出来上がらない。このような香辛料にも困った一面がある。殺菌が難しいのだ。市販の香辛料は雑菌が多い傾向がある。


2 香辛料による汚染実例

(1)ローストビーフの腐敗
 おせち料理の保存実験をしたところ、その中のローストビーフのいたむスピードが非常に早かった。製造日の生菌数7,900/g、常温保存2日で2.7億/g、5日で420億/g、と一気に腐敗にいたっている。これは加熱後にふりかけた香辛料の細菌汚染が原因と考えられ、香辛料を未殺菌のものから殺菌のものへと変更した。
(2)鶏肉から揚げの腐敗
 弁当に入れた鶏肉から揚げが臭うとの苦情申し立てがあった。から揚げから、バチルス属の細菌が多数見つかった。原因は、から揚げに使用した香辛料由来の細菌汚染と考えられ、やはりこれも、未殺菌だったものを殺菌した香辛料に変更した。


3 どうして雑菌が多いのか?

 香辛料の生産国は東南アジアを中心とした発展途上国に集中している。日本でも一部唐辛子、山椒などは生産していますが。表1に香辛料の主要輸出国や利用部位を示しました。

  表1 香辛料の主要輸出国・利用部位など
―――――――――――――――――――――――――――――――
  香辛料           輸入量(t)  輸出国         利用部位
…………………………………………………………………………………
ペッパー(こしょう)       6,006  マレーシア、インドネシア   果実
チリーペッパー(赤唐辛子)  4,999  中国、パキスタン、韓国   果実
ターメリック(うこん)      3,256  インド、中国           根茎
コリアンダー(コズイシ)    2,559  モロッコ、オーストラリア    種子
シナモン(ニッキ、桂皮)    2,034  中国、ベトナム、インドネシア 樹皮
パプリカ(甘唐辛子)      1,941  チリ、スペイン、ブラジル    果実
クミン(馬芹)          1,056  イラン、インド          種子
フェンネル(ういきょう)     556   中国、インド          種子
ナツメグ(にくづく)        374  インドネシア、シンガポール 仁(子実)―――――――――――――――――――――――――――――――
                * 1991年度大蔵省統計より

 このように、香辛料はすべて農産物であり、果実だったり種子だったり、根茎だったりするので、農場の土壌由来の汚染は、免れないところです。
 また、収穫後の乾燥選別保管等が、どのレベルで衛生管理されているのかも気になるところです。表2に細菌検査状況を示しました。

 表2 香辛料の細菌検査状況 (/g)
―――――――――――――――――――――――――――――――
 香辛料        総菌数   耐熱性菌  大腸菌群 糸状菌(カビ)  
…………………………………………………………………………………
ホワイトペッパー    90,000     40,000    2,000   20,000  
ブラックペッパー  40,000,000  30,000,000   40,000   10,000 
ターメリック     30,000,000  20,000,000    600   40,000
コリアンダー      100,000      −     −     −   
シナモン         30,000     20,000     −     400 
パプリカ          4,000     2,000    −      500  
クミン           30,000      −     −     −  
フェンネル        50,000    40,000     −    300  
ナツメグ          −        −     −     −  
―――――――――――――――――――――――――――――――
                       *食品照射 20巻p23,1985

 このデータは、香辛料会社から直接入手した材料により検査されたものです。
 ブラックペッパーやターメリックの総菌数、g当たり1千万レベルは半端な数じゃないですね。80℃15分処理した後も、耐熱性菌としてまだ1千万レベルの菌が残っている。
 食品衛生法では、魚肉練り製品や食肉製品の食品材料として、香辛料の耐熱性細菌(芽胞数)は1,000以下と定められているので、これでは全然基準に合わないなあ。耐熱性菌が原料に多量にに混じってくると、少々の加熱殺菌では生き残って不良品の山となってしまう。
 普通に出回っている業務用の香辛料は、殺菌処理など全くせずに出荷しているはずなので、かまぼこやさんやハム屋さんは、やはり特別に殺菌した香辛料を利用しているのでしょう。
 またカビも、検出しないものもありますが100から1万レベルまで検出されています。Aspergillus flavus(アスペルギルス フラバス)等がはびこれば、アフラトキシンなどカビ毒の心配も出てくるところです。


4 香辛料の殺菌方法は?

 上で述べてきたように、香辛料の原料は種々の微生物汚染があり、食品製造用、特に広域流通させる場合、汚染の少ないものが必要となります。
 香辛料の殺菌は、やはり加熱殺菌が基本であり、乾熱殺菌として、火であぶる方法、蒸気殺菌として、飽和水蒸気を用いたり、過熱水蒸気を用いる方法があります。これらは残念ながら、香辛料の香りを欠損させたり、変色させたりと、品質の劣化が避けられないところです。
 紫外線照射も有効ですが、浸透力が無いため表面殺菌しか出来ません。
他に技術的には放射線殺菌、薬剤による殺菌があります。
 放射線殺菌は外国では、アメリカ、フランス、インドネシア、韓国などすでに20ヶ国以上で実用化されていますが、我が国では禁止されています。薬剤による殺菌は、次亜塩素酸ソーダ、アルコールは認められていますが、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドによるものは認められていません。


5 おしみゃあに

 香辛料の殺菌はやりたゃあが、熱をかけるとさいがピリリ度が減るんだわなも。ジレンマだぎゃあ。放射線殺菌は熱が上がりゃあせん、冷たゃあまんまだで、優秀な方法じゃが、禁止されとるわなも。
 結局、ぱっぱっとふりかけやぁて、ちゃっと食べやぁすなら、もとから殺菌せんでもええちゅうことだなも。

                       *ちゃっと:急いで、すぐに




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