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△△△食監物語
アイスクリーム工場さんやっとかめ
                        h12.11.12


1 はじめに
 アイスクリームの起源は、イタリアはシシリー島らしい。そこで氷と食塩を混ぜるという冷却方法により、シャーベットを作ったのが始まりという。
 現在のアイスクリーム工場における製法は次のようである。
@まず、アイスクリームミックスの調整を行う。原材料として生乳・バターなどの乳製品や糖類、乳化剤、水などを混合し、更に均質機を通し脂肪球を細分化する。
A次に、殺菌工程に入り、アイスクリームミックスを加熱し、殺菌する。そして急速に冷却し、0℃付近で保持し、ミックスを安定化させる。これをエージングという。
B続いて、凍結させるが、同時に激しく攪拌しながら空気を吹き込み、微細な空気の泡を分散させ、舌触りを良くする。容量は1.8〜2倍(オーバーラン)となる。
C最後にカップへの充てんを行い硬化させる。

2 アイスクリーム工場の衛生
 工場内に立ち入るに当たっては、入場手順が大事である。衣服やはきものを改め、帽子をかぶり、手洗いを十分に行うなどである。
(1)タンクやパイプラインの洗浄
 工場内に入るとタンクがあちこちに配置され、パイプラインが走っていて、ちょっと圧倒されてしまいそうな光景である。パイプラインには液送用のポンプが挿入配置されている。
 「タンクやパイプラインの洗浄はどのようにやっていますか?」
 「いつやりますか?毎日ですか?分解しますか?洗浄液は?...」
と、確かめておきたいことが多数ある。
 通常、タンクやパイプラインは作業開始前に殺菌を行う。また作業終了後CIP洗浄(Clean In Place 定位置そのままの自動洗浄)を行い、自動洗浄不可の部分は分解洗浄をし、翌日に備える。また、1週間に1回程度はすべて分解し、コーナーや連結部に粘着・固着した蛋白汚れや乳石をブラシなどを用い、丁寧に洗浄する。連結部のパッキンやシールの劣化・破損は微生物汚染につながるため、分解時に注意し、随時交換が必要である。製造時にぽたぽたと液もれがしてはじめて気づくようではいけない。また、タンクのピンホールにも注意が必要だ。
(2)ミックスの殺菌
 アイスクリームの原材料を溶解混合したものをアイスクリームミックスと呼んでいるが、ミックスは調合タンクで混合され、殺菌機を通ることとなる。
 「ミックスの殺菌はどこで行いますか?」
 「温度計はどこにありますか?何度で殺菌しますか?保持時間は?どのように記録していますか?」などと聞いてみる。
 ミックスの殺菌はアイスクリームの衛生上最も重要なポイントである。アイスクリームの原材料は乳・乳製品が主成分のため微生物汚染を受けやすく、確実な殺菌が義務づけられている。68℃30分以上またはそれと同じ効果のある方法での殺菌が、製造基準として定められている。
 小量生産の場合は、タンクでまとめて加熱するバッチ式であるが、大量生産の場合は連続式である。連続式には、熱交換プレートが用いられ80℃20秒程度加熱するHTST法(高温短時間殺菌法)、130度2〜3秒加熱するUHT法(超高温殺菌法)がある。
 これら連続式の場合、殺菌温度が規定より下がった場合は、ディバージョンバルブが自動的に働き、ミックスをバランスタンクへ逆送させ、再殺菌にまわされる。

(3)充てん・硬化の工程
 殺菌工程を経たミックスは冷却・エージング・凍結工程を経て、−3℃前後のソフトアイスクリーム状態となっている。
 「カップに詰める時、異物混入は大丈夫ですか?」と尋ねてみる。この工程では、容器のカットくずや、充てん機の緩んだネジ類、毛髪、昆虫類など色々なものが入り込む可能性がある。
 大規模工場では、充てん室には清浄空気を吹きこんで陽圧とし、空気の流れを常に外に吹き出すようにして、ほこりや昆虫類の流入を防止している。また、カップへの充てんの直前にバキューム装置を組込み、カップ内の異物の吸出しを行っている。

 (4)細菌検査などの実施状況
 「どんな検査をしていますか?」とも聞いて確認したいところだ。
 最終製品の検査はもちろん大事だが、原材料や中間製品の検査も大事なところである。特に原材料の生乳などが黄色ブドウ球菌やセレウス菌で汚染され、毒素産生されていると、毒素は耐熱性のため、殺菌工程を経ても毒素が最終製品に残ってしまうこととなる。原料受入時に検査し、品質の良いものであることを確認のうえ、適正な温度で保存することが必要である。
 そのほか、ミックス殺菌後の検査により、確実に殺菌されているかの確認をしたり、最終製品の検査により、製造全般が良好であるかどうかの確認も重要である。
 衛生管理全般には、機械整備マニュアルや、清掃・手洗い・服装・原料受入・製品保管など種々の衛生について定めた衛生管理マニュアルを整備し、工場一丸となって、遵守することが重要である。
 近年は製造部分に関する衛生管理については更に、危害分析により重要管理点を設定し、その管理を重点的に行うHACCPシステムを作り上げ、厚生省の認定を受けた工場も出てきている。

3 違反事例
 アイスクリームの検査をしたところ、大腸菌群を検出し、また細菌数も1g当たり30万個検出した。基準は大腸菌群不検出、細菌数1g当たり10万個以下である。
 メーカーは小さいタンクが三つほどのごく小規模な工場であった。その工場では洗浄時のブラッシングの省略がまかり通っていた。
 特に、パイプの分解を毎日行ってはいたが、そのパイプをつけこむ洗浄液の入った水槽が小さく、パイプが完全にはつかっていなかった。にもかかわらず、つけこみ後、ブラシを使わず、水洗いだけで洗浄を終了していたので、パイプに汚染が蓄積されていた。
 
4 おしみゃあに
 アイスクリームはナモ、殺菌工程があってナモ、製造シャアタ後は凍結シャアテ食べる時まで冷凍のまんまだで、安心し過ぎて、衛生管理をサボってまうことになりやすいんだわ。
 特にさいが、ミックスを殺菌シャアタ後通過するパイプライン、エージングタンク、凍結機、分注機の洗浄殺菌をさいが、みゃあにちみゃあにち、ちゃっとちゃっと、やらにゃあ、だちかん!

 シャアタ:した
 さいが:特に意味のない接続の言葉 
 みゃあにち:毎日
 ちゃっと:急いで、すぐに、確実に
 だちかん:らちがあかない、だめ





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