達人の教えなど 本文へジャンプ


(2)達人B氏の教え


1 基本
(1)息を絞らず開いて吹く
・尺八の息は強い息が基本。開いて吹く。息を絞らないこと。唄を歌うのと同じ。喉を絞ってはいい声にならない。のどを開いて腹から声を出すといい声となるのと同じ。
・音を飛ばすこと。音を絞らないこと。開いて吹くことが大切。
・初心者のうちは強く吹くと息切れがしてしまうので、そっと吹くことで、息継ぎを我慢していることも多いが、いつまでもそっと吹いていてはいけない。
・多くの人は小さい音になじんでしまっている。意識して絞らず開いて吹く。
・そっと吹くのが習慣になった人は開いて吹くのに1年はかかる。
 ・ストローで息を吹く。ごく強く吹いて、息の強さが十分前に出るように。それくらい強く吹く。
 ・大甲レを吹こう。大甲レは息を絞っては音が出てこない。大甲レを吹いて、さらに息が広く開いて吹けるように練習するとよい。
(2)腹式呼吸
 ・腹式呼吸で吹く。寝転がっても強い音で吹けるようでないといけない。

(3)音の高低の調整〜メリカリも含め
  メリ音は唇を歌口に近づける(または尺八を下から押し上げて歌口を唇に近づける)ことを行えば通常のメリ音は出る。さらに必要ならほんの少しだけメリカリをすればよい。
 メリカリをすると唇がずれてしまうことが多く、突然音が鳴りにくくなることが多い。メリカリせずにできるだけ唇を尺八で押す・離す、で音の高さを調節する

(4)音が鳴りにくい
  人によっては尺八を普段より上にあげると鳴りやすくなることもある。あごを下げて吹いているとのどが詰まってしまうことが多い。尺八を上げることによりつられてあごも上がり、あごを上げることによって詰まったのどが開き自然と圧力の高い息が出てくる。

(5)甲ピの出し方
  裏穴をほんの少しだけあけて吹く。教本通り裏穴を全開すると、よほどメらないと正しい音とならない。ごく微弱な音となってしまう。裏穴を完全に閉じる(ロの大甲)というのもあるが、通常使いの音とは違う。古典の曲ではピを絞ったほうがよい曲もあるが、通常はちゃんとまともな音量でピの音を出すことが大切。
 息を絞らないこと。唄を歌うのと同じ。高い音ほど声量を出さないと上手に聞こえない。喉を絞ってはいい声にならない。
 ピの出て来る場面はたいてい、曲が盛り上がるところ。ここで音を絞ってしまっては曲が台無しになってしまう。裏穴をほんの少しだけあけて十分強い息で吹き、ちゃんとした音を出す。(たぶん、唇を歌口に近づける(または尺八を下から押し上げて歌口を唇に近づける)ことを行う必要あり。)

(6)アンブシュール(唇の形)
 音によってアンブシュール(唇の形)が変わる。乙ロ⇔ピの往復はなかなか難しい。特にピ → 乙ロが難しいが、アンブシュールを覚えていて即座に形作ればさらさらできるようになる。一音ずつのアンブシュールを体に唇にちゃんと覚えこませればごくスムーズにその音が出てくる。
 大甲のレもアンブシュールをその形にすれば、力まなくてもさらっと出てくる。
(7)気づきが大切
 ちょっとしたアドバイスが飛躍のもとになる。教えてもらうのは大事なこと。気づき改善習得、気づき改善習得、これの繰り返しで見違えるほど上手になる。マンネリでやっていてはちっとも上達しない。

2 練習
(1)ロングトーンを吹く練習:ちゃんと息を吸うことが大切。それによって、ロングトーンが可能となる。一音ずつできるだけ長く伸ばす。
 乙:ロ→ツ→レ→チ→ハ→(甲)ロ→ツ→レ→チ→ハ→ピ
(2)4拍ずつ吹く練習:頭をちゃんと出す。そのために息を吸うべき時に(音の直前に)ちゃんと吸う。頭をふわっと出てはいけない。遅れてしまって琴に叱られることとなる。
 乙:ロ→ツ→レ→チ→ハ→(甲)ロ→ツ→レ→チ→ハ→ピ
(3)パクパク吹き:正しい構え方(アンブシュ)が身につく。ある音、例えばハを吹こうとする。そして、笛に下あご(下唇)を当てたまま、口(上唇)を大きく開け、パクッと口を閉じてハの音を出す。息を吹きだそうとせず自然に任せるだけで、口を閉じた勢いでハの音が出る。パクパクパクと1秒おきに何度も繰り返す。すべての音がこれで、自然に出るようになれば、いつでもどこでもパッと笛を構えればパッと音が出るようになる。尺八の基本はこれに尽きるという人もいる。
息の吸い方:息は口でスポッと吸う。鼻で吸うのは無理。パクパク吹きのように上唇をバッと開けてバーンと吸う。
(4)譜面台を目一杯上げて練習:前に音が響くようになる。うつむいて吹いては音が響かない。顔をがーっと前に向けて音を前に出そう。
(5)大声を出すように吹こう:ハァーッ!と何回も大声を張り上げる。歌手が大勢の観客の隅々まで声を届かせようと腹の奥底から声を湧き立たせるように。そのような体の動き、流れ、力の入れ方、息の出し方でハの音を吹こう。乙のハより甲のハの方が響く。壁の向こうに、2階席3階席まで音が響き渡るように吹こう。