達人の教えなど 本文へジャンプ


(4)フルート教本での唇の使い方

 以下に紹介する本はフルートの教則本ですが、以下の記述は、尺八の音色をランクアップさせるためのキモの部分そのものと考えています。前出の達人C氏の”唇をこする”という記述とほぼ重なります。達人C氏は、”唇こすり”の練習は上達するまで待て、でないとスランプに陥るのが関の山と述べていますが、その点ご注意ください。

― フルート演奏技法 エドウイン・プトニック 全音楽譜出版より ―全103p 2,200円
p18 あごの使い方
 下あごを前後に動かすことによって、吹く息でできる空気柱の方向は効果的に支配されます。簡単に言えば、低い音域の音や大きな音を出そうとすればするほど、下あごを下に下げるのではなく手前に引かなければなりません。また、音を高くしようとしたり、弱めようとしたりする時はあごを前方へ押し出すようにします。
 このあごの動きは、適切に数種の目的を達成させます。すなわち、空気の流れの方向の変化は、唇がアンプシュール・ホールにどれだけかぶさっているか、唇の開き具合、のどの開き方、および、相対的な唇の緊張度のそれぞれに対応する下あごの動きによって完成されるのです。

p27 初歩の指導 ゼクエンスとテクニック 中略
p28 
 正しいあごの動きはどういうものであるかということは、教師の模範演奏を見て覚えるのが普通です。時々教師のあごの動きを真似るのをとても難しいと思う学習者がいるかもしれませんが、そういう人は、今までに意識的に使ったことのない筋肉を使うからそう感じるのです。
 そのような人は、下の門歯と上の門歯の位置関係を変えればたいていは救われます。普通に歯をかみ合わせると下の前歯は上の前歯の少し裏側に位置するようになります。フルートを持たないで下の前歯が上の前歯とそろうところまで持っていき、それから上の前歯より前に出るところまで下の前歯を突き出し、再びもとの位置へ戻すという動作を何回も繰り返してフルート演奏に欠かせないあごの運動を理解しましょう。
 フルートを持っていても持っていなくても鏡の前であごの運動の練習をしてください。フルートには、斜めに息を吹き込んだり、あるいはまっすぐ吹き込んだりするものだ、という観念や、必要に応じては下唇を前後に動かすものだ、という観念も、しばしばあごの正しい動かし方を会得するための助けとなるでしょう。



 このエドウイン・プトニックの本は尺八の中級上級クラスにとって腕前向上の理論上の支えとして、非常に参考になります。私は隅々読み込みました。ぜひご購入をお勧めいたします。
 なお、フルートのまねをしてもちっともうまくならないから無駄だ、という方もいらっしゃいます。心してお試しください。