尺八ワンポイント 本文へジャンプ


(11)尺八 ユリの入れ方

 三曲合奏(尺八・琴・三絃)する時、尺八も見事に吹きたいですよね。やはり譜面通りではなく、あれこれ音に飾りをつけてやる必要があります。
(1)ユリ
 音の修飾で最たるものはユリでしょう。2拍以上の長音はユルことに心がけましょう。ユリはちょっとユレば大きく音が変わる場所を探しそこでユリます。ユル時には歌口と唇が正確に平行になっていないとぷつと音が切れてしまいます。まっすぐに吹くのはモノクロの世界、ユルのはカラー版。全く別の世界となります。また一からやり直しのような、世界が広がったような感じがあります。
(2)正しく構え、首を自由に振る。
 ユリには横ユリ・たてユリ・回しユリと色々ありますが、特にこだわらず、首を横に振ってみたり、縦に振ってみたり、回してみたりと、自由に振る・振れることが大切です。
 首を動かすと、当然笛と唇の接点も動くため、音がプツッと途切れてしまうことも多いのです。音が途切れないように何度も正しく構え直し、首を動かします。音が途切れず、最も大きくユレるところがポイントです。
 たてユリは少しの動きで横ユリよりも大きくユレますが、安定して吹くのには練習量が必要なようです。横ユリは鏡を見て正しく構え、鏡を見て正しく唇に沿って横に振れば、音が途切れないはずです。
(3)管尻を上げてユリを止める
 ユリを入れると、せっかくの入れたユリのせいで曲のメロディーが不安定になります。それは、ユリが止まらず正音が幹となっていないためです。常に波長がずれたままでフラフラしているせいです。ユリは入れたり止めたり入れたり止めたりしなければ、ふらふらします。
 ユリを止めるには、管尻を上げます。管尻を上げるとあーら不思議、音が正音となりメロディーの幹がしっかりします。
(4)ハローー、ハローーでユッてみる
 普通にハローと吹き、ロの音を確認した後、ユリはじめます。2,3秒ユッたら管尻を上げてユリを止め、次のハローに入ります。ロの音を確認したらユリ続けます。音が微細に最小に途切れるまでユリ続けます。
 このようにユル−止める−ユル−止める、を何度も繰り返してみましょう。ユリを入れない時よりはるかに尺八らしい音となっているはずです。
(5)ユル前につやのある音にする
 ハローーのユリで普通にユルよりも、ロの音をつやのある音にしてからユッた方が、雰囲気が出ます。つやのある音にするためには、唇をこすります。

  
こすって上唇を出してやると、息の量が増えて音も大きくなり、少し圧力を加えると、つやのある音となります。そこからユッてやると更に尺八の音色らしくなります。
 唇こすりの方法は第3章尺八各論(4−b)アンブシュール(唇の形)をあやつるーあごの動かし方ーの項で述べた方法です。
 息を吹き出しながらあごを前後させていると、まるで唇をこすっているようにも感じると思います。息の出ている中央部分はこすれませんが、唇の両側がゆっくりこすれているのがわかると思います。大げさですが、図Bの状態から図Aの状態にこすってやれば息の量が増え、口内圧又は腹圧を強くしてやれば、つやのある音となります。そこからユリはじめるわけです。お試しください。
(6)全開音を入れる(おまけ)
 ユリ終わりに音がスーッと消える直前に、孔を抑えている指をパッと全部離してやると、ポッとわずかな音が鳴ります。それがまた尺八らしさを増してくれると思います。これもお試しください。