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(4)アンブシュール(唇の形))−あれこれ−

 唇の作り方は尺八吹きにとってもっとも難しいテーマです。初心者にとっても中級者でも、上級者でもあれこれ悩ましいことが多いものと思います。以下に述べる私のやり方がいいのか悪いのかよくわかりません。やせ薬や健康食品のように、これを試したら効いた、うまくいったのたぐいかもしれませんが、私の場合はうまくいきました。

  尺八を吹くときには図のように、唇に細長い吹き出し口を作って、歌口に向かって息を吹き込みます。その時の唇の形により、よく音が鳴ったり、かすれたり、小さい音だったり、音が高かったり低かったり、ぷつんと音が途切れてしまったり。レの音はよく鳴っていたのにチに移ったらもう鳴りにくい、ということもあるし、乙から甲、甲から乙に変わるともううまくいかない、ということもあります。すべて唇の形作りの(アゴの動きや、歌口の唇からの距離も含めて)問題だと思います。
 ここで、唇の形、アゴ及び歌口で作る全体像をアンブシュール(唇の形)と呼ぶことにします。

 
 尺八のアンブシュール(唇の形)の筋肉の使い方は口笛を吹くときとかなり似ています。
 口笛は吹き出し口がまん丸ですが 唇周りの筋肉の口輪筋を主に使っています。唇の絞り方もかなり緩やかで、少し唇を突き出し、高音になると少し唇を絞り気味になります。どんな場合でも決して唇の丸い穴を閉じることはありません。
 尺八の場合は口輪筋に加え唇両側の咬筋も使って、横長の吹き出し口を作ります。尺八を吹きながらも、口笛を吹いているときを思い出して、唇にあまり力を入れないようにすることが大事です。唇に力を入れすぎると、音が硬くなるし、滑らかな音の移り変わりがしにくくなります。
 アンブシュール(唇の形)の作り方の基本的な練習法としては、まず、口笛を吹いているかのような唇の形にして、息を吹き出します。それから、息を吹き出しつつ咬筋を横に徐々に少し引っ張って横長の吹き出し口を作り息を吹き出します。これを何回か繰り返すと横長の吹き出し口となったアンブシュール(唇の形)が完成していきます。口笛を吹くかのような、と表現しましたが、実際に丸い吹き出し口にして口笛を吹いてしまうと、筋肉に記憶された横長のアンブシュール(唇の形)が崩れて尺八の音が鳴りにくくなることが良くあるからです。私は尺八を吹くようになってから口笛はあまり吹かなくなりました。アンブシュール(唇の形)がよっぽどうまく作れないときに、口笛はどんなくらいの唇の硬さだったかなあと思い出しながらやけくそ気味に吹くことはありますが、、、
 口輪筋、咬筋に加え頬骨筋も使うと泣き笑いのような表情というか、モナリザのほほえみ(アルカイックスマイル)のようになります。この形がいいんだという方もいらっしゃいますが、私は頬骨筋はあまり使いません。人それぞれでいいと思います。